かつての生物兵器
ボツリヌス菌は、クロストリジウム属の細菌です。
適度に湿った土の中に芽胞（胞子）のかたちで広く存在します。
ボツリヌス菌の語源はラテン語の「botulus」で、その意味は
「腸詰めソーセージ」だったそうで、１９世紀ヨーロッパでハムや
ソーセージを食べた人たちの間でおこる食中毒であったために
この名前がつきました。
ボツリヌス菌がつくりだす「ボツリヌストキシン」は毒性が非常に
強く、かつては約５００ｇで地球上の人間を絶滅させることが
できると言われていたそうです。
スポンサーリンク
ボツリヌス菌は毒素の抵抗性のちがいによりA～G型にわけられ
人に対する中毒は A,B,E,F でおこります。
A,B型は 土の中に分布し、E型は海底・湖・沼に分布します。
ボツリヌストキシンの致死量は、７０Kgの人間に対し A型毒素
であれば、0.8µg(マイクログラム) つまり 120万分の１gと
考えられ、１ｇで120万人分の致死量に相当するということに
なりますので、自然界に存在する毒素の中では最強と思われます。
大半は、ボツリヌス菌をふくんだ食物をたべることで発症しますが、
家庭菜園などの、土を触ったあとの手についている場合もあります。
あと、腸管の手術ごや、大量の抗生物質を服用し腸内細菌が減少
した場合も、発症しやすくなります。
この、ボツリヌス菌は全身マヒを引きおこし、最悪の場合は呼吸系
マヒで死亡することもあるようです。
発熱はほとんどなく、意識もはっきりしたままですが、のどの渇きや
ものが二重に見える、ろれつがまわらない、排尿・発汗障害を
おこしたりするそうです。
とくに、気をつけたいのが、「幼児ボツリヌス症」と呼ばれている
もので、感染すると便秘などにつづき全身脱力がおきて首のすわりが
悪くなるという症状がみられるようです。
原因となった食物のひとつが蜂蜜でして、1987年10月の厚生省（当時）
の呼びかけで、１歳みまんの乳児に蜂蜜をとらせないようにと
予防対策が通知されました。
乳児はまだ、腸内細菌が未発達なうえに、腸管も短いことがその
理由とされます。
もし、ボツリヌス中毒が疑われる場合には、ウマの抗毒血清による
治療を早くおこなう必要があるそうです。
ボツリヌス菌の重大な事故
1984年、九州のある会社が製造した真空パックの「からし蓮根」
を食べた３６名のがボツリヌス中毒になり、そのうち死者１１名
をだすという事故が発生しました。
原因は製造につかわれた輸入品の「からし」がボツリヌス菌に汚染
されていたため、真空パック化により菌が増殖したもとされました。
予防策として
容器が膨張していないかよく確かめることです。
缶詰や真空パック製品が膨張していると危険です。
自家製瓶詰めなど、製造での対策は、１２０℃で、４分間加熱する
中心部まで十分に殺菌します。
ボツリヌス菌は非常に熱に強く、１００℃程度では、加熱時間を
長くしても殺菌するのは難しいです。
製造から消費まで冷蔵（１０℃以下）で保存し、菌の増殖・毒素の
産生を防止します。
容器の表面に製造日付を書きいれましょう。
「要冷蔵」「１０℃以下で保存してください」などの表示がある場合は
買い物をしたら寄り道をせずまっすぐ帰り、すぐに冷凍保存をします。
発酵魚・燻製などそのほかの海産物は慎重に選びましょう。
にんにくやハーブがふくまれているオイルは冷藏庫で保管してください。
調理されたジャガイモがアルミホルに包まれた状態はボツリヌス菌が
繁殖しやすい無酸素の環境をつくりだします・・・こういったものは
温度が高いまま保存するか すぐ冷藏庫にいれてください。
スポンサーリンク