イワンノチュウー六つの星
北海道のアイヌ民族には、つぎのような伝説があります。
むかし、ある夫婦に10人の子どもがいました。
娘が7人、息子が3人・・娘たちはとても怠け者で、家族の
ために働くことはいっさいなく、1日中遊んでいました。
いっぽう、息子たちは働き者で、朝 早くから夕方 暗くなる
まで畑をたがやし、よく働きました。
「ぶらぶら遊んでばかりいないで、畑をたがやすのを
手伝っておくれ」
息子たちが娘たちに頼みましたが・・
「いやよ・・畑をたがやすと手が汚れるでしょ・・・
そんな仕事したくないわ」
と娘たちは答え。
「手が汚れたら、川の水で洗えばいいじゃないか」
息子のひとりがいうと、また娘たちは答えました。
「まあこわい!手を洗っているとき、川に落ちたらどうするの」
べつの息子がいいました。
スポンサーリンク
「そんなの問題ないよ・・・もし落ちたら、川岸の草に
つかまればいい、そうすれば絶対に流されないよ」
これに答えて、娘たちはいいました。
「まあ、草の葉で手を切ったらどうするの」
そして、とうとう、娘たちはいいました。
「わたしたち、星になりたいの・・・星なら、なんにも
しなくていいから!」
これを聞いた3人の息子たちは怒って、7人の娘たちを
つかまえようと追いかけましたが、娘たちは舟にのって逃げ
ました。
息子たちも、さらに舟で後を追いました。
けれども、こぎ手が7人もいる娘たちの舟はとても速くて
なかなか追いつけず、娘たちの舟は、とうとう星明かりの空へ
昇っていきました。
息子たちの舟も、後を追って空に昇っていきます。
7人の娘たちが西の空に着いたとき、カムイが娘たちのまえに
現れてこういいました。
「おまえたちは、なんという怠けものか・・・とまれ!」
舟はただちに止まりました。
カムイは、星になりたいといっていた7人の娘たちを、弱い光の
小さな星に変え、懲らしめのために、1年の畑仕事が終わって
寒い冬が近づく秋に、空に昇ってくるようにしました。
7人のうち、いちばん年の若い娘は自分をはずかしく思って、
両手で顔をかくしてしまいました。
そのため、7つの星のひとつは姿を消して、6つの星になりました。
それからこの星たちは、イワンノチュウと呼ばれています。
*アイヌ語でイワン=6 ノチュ=星
イワンノチュウとは、スバル「プレアデス星団」のことです。
カムイはまた、よく働く3人の息子たちを讃えて、
一列にならぶ明るい星に変えました。
これが、オリオン座のベルトの3つの星です。
採禄 末岡外美夫
スポンサーリンク