天の川伝説
むかし、タイの北部がまだ未開の地だったころ、山の上の森に、
「ルア」という部族が住んでいました。
ルア族は北の広い土地を縄張りに狩猟をして、ときどき山の
ふもとの村に下りてきては、捕った動物を米などと交換して
暮らしていました。
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そのころ、ふもとの村を支配していたのは、「カチン族」という
勇猛な種族で、周辺の部族らはこのカチン族の「長」である男を
大変、恐れて、男が要求したものは何でも、すぐに差し出しました。
それが、カチン族との戦いを避ける唯一の方法だったからです。
ある年、ルア族にこの族長からとんでもない要求がだされ、
「貢ぎ物として毎年 未婚の少女をさし出すように」と刻まれた
棒をミンタという使者にもたせて、山の上にやって来たのでした。
けれども、こんな要求はとても飲めません。
「なぜ、我々がこんな恥知らずな要求に従わなければ
ならないのか・・あまりにもひどすぎる」
ルア族の人々はそういって、カチン族長の要求を退け、
そうして、山上のルア族と山麓のカチン族の戦いが始まる
ことになりました。
カチン族の長は、ふたたびミンタを使者として、山の上に
最後 通告を送ってきました。
ところが、使者であるミンタはルア族の少女と恋に落ちたのです。
悲しいことに、このような時ですから、とうてい結婚は叶わず、
ミンタはルア族の長に懇願しましたが、
「おまえは、自分の部族のところに戻れ」 と
カチン族への見せしめに手足を縛られ、山麓に放り出されました。
ミンタはひどく憤慨して、そこでカチン族の仲間と相談して、
ルア族に復讐することになりました。
いろいろ策がだされましたが、話し合いの結果、ミンタがルア族の
もとに戻り、少女との結婚をあきらめたふりをすることに決まり、
ミンタはまた山上にいって、策略どおりルア族の族長の信頼を
得ようとしました。
ルアの人々も何も疑わず、ミンタを受け入れました。
そこで、十分に準備をしてきた、ミンタは少女に会い、聖なる
洞窟にいって、自分を待つようにました。
聖なる洞窟のかべのくぼみには、祖先の遺体が安置され、部族の
守り神と交信できるのです。
少女が出発すると、ミンタは薮に火をつけて、カチン族に合図を
し、近くに隠れていたカチン族が一斉に飛び出して、火の手に
戸惑ってたルア族の人々を奇襲攻撃し始めました。
急いで聖なる道を走っていって少女に会ったミンタは、少女と
ともに洞窟に逃げ込みましたが、途中でそのふたりを見かけた
寺院の近くにいた女たちは、ふたりの後を追って聖なる道を
進みました。
ルア族の人々は、四方八方に逃げ戸惑いながら、多くの人びとが
無惨にも焼け死んでしまいましたが、生き残った者の中に、
年老いた呪術師がいました。
呪術師は大いそぎで先祖を祀る聖なる洞窟にいき、中を流れる
聖水で白い布をぬらして、洞窟のかべのくぼみに安置されている
先祖の遺体すべてに、かぶせました。
それから、祈りを捧げて、部族の守り神に呼びかけました。
すると白い布がするすると伸びて、空のかなたまで届く白い
道になり、まず呪術師が、その道をのぼりはじめ、ミンタと
少女は、寺院にいた女たちとそこの白い道にたどりつき、
次いで、少女は２番めに白い道をのぼっていきました。
そのあとから、ミンタも、のぼろうとしました・・・
ところが、ルア族の守り神は、ルア族を裏切ったミンタに
恋人のそばにいることを許しませんでした。
火の手が迫ってきたため、急いで逃げる寺院の女たちがミンタを
押しのけ、群がって白布の道をのぼっていったのです。
みんな、燃えさかる火からできるだけ離れようと、けんめいに
のぼっていきましたので、ミンタはいちばん最後に、白布の道を
のぼっていきました。
そのとき、空が大きく動き、暗闇の中で燃えあがる森が発する
赤い炎に照らせれて、空が大きくうねり、白い布も大きくうねり
ミンタを少女たちから引き離すように、２つに裂けてしまいました。
そして白い布は、もとにもどることは決してありませんでした。
ミンタは、自分が望んだように少女のそばにいることはできません。
そのとき、老呪術師が呪文をとなえると、みんな明るい星になり、
これが、タイでの「天の川の起源です」
口授 タイ北部のマエ・サ・レアン地方の老人
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